http://www.i-foe.org/h26wa29256
3月14日に行われた非公開での協議に提出された原告側の準備書面の一部が公開されています。
これらの準備書面はホタル生態環境館での活動の経緯を詳細に記述しており、たいへん意義のある資料となっています。この中で、私が今回最も注目したのは、原子力機構(以下、原研)の行ったナノ銀による放射線低減現象の追試結果についての論述です。
原研は追試を2回行っているのですが、2回目の追試で、とても計測誤差とは考えられないような大きな放射線量の変動が観測されているのです。大きな所では、実に5%以上の放射線の低減が見られます。原研の報告書には「セシウムの低減効果は認められませんでした」と切って捨てられていますが、原因追究が必要なデータでしょう。原研はデータを見る能力が無いのでしょうか?
以下に原告の準備書面の該当部分のみをテキスト化したものを載せます。※印をつけた文章は私のコメントです。
第2回目試験のA土壌の結果分析からみた問題点
2回目のA土壌の試験結果については、下記のような数値となっている。若干原告サイドで加工して、その測定結果について以下のような表を掲示する。
表1 A土壌の計測データと1回目基準の相対強度計算値.
1回目測定 | 2回目測定 | 3回目測定 | 4回目測定 | 5回目測定 | |
測定時間 [sec] | 600 | 619 | 619 | 620 | 1800 |
Cs-134 | 29193 | 28458.4 | 28408.1 | 29902.8 | 85376.8 |
(27584.9) | (27536.1) | (28938.2) | (28458.9) | ||
Cs-137 | 39349 | 38400.6 | 38405.7 | 40209.7 | 115914.8 |
(37221.9) | (37226.8) | (38912.6) | (38638.3) | ||
合計 | 68542 | 66859 | 66813.8 | 70112.5 | 201291.6 |
Cs-134 | 1.000 | 0.945 | 0.943 | 0.991 | 0.975 |
Cs-137 | 1.000 | 0.946 | 0.946 | 0.989 | 0.982 |
合計 | 1.000 | 0.946 | 0.945 | 0.990 | 0.979 |
* 2回目以降についての下段の括弧の中の数値は1回目の測定と同様に、600秒に置き換え
て計算したものである。(※ 原研がなぜ619秒や620秒という半端な時間で測定しているのか疑問です。最初が600秒であれば他も600秒に揃えるのが普通だと思うのですが)
表1を見て、まず気が付くことは、2回目の測定で Cs-134 と Cs-137の両成分ともに、1.0から0.945と0.946と比較的大きな比率:5.5%、5.4%程度の減衰を示していることである。その後、第3回目も似たような傾向 (Cs-134:0.943, Cs-137:0.946) となっており、逆に、第4回目はそこから4%以上増加している。そして、再び5回目においては2回目3回目のレベルには届かないものの再度減じている。
(※ Cs-137の半減期が約30年という事を思い出してください。短期間の測定で5%もの減衰が観測されるのが異常である事は直感的にも分かります)
(※ Cs-137の半減期が約30年という事を思い出してください。短期間の測定で5%もの減衰が観測されるのが異常である事は直感的にも分かります)
以上の第2回目以降の減衰と第4回目の増加と5回目の再度の減衰は、計数の統計的な揺らぎの大きさから考えると明らかに有意な変化(*1)である。例えば Cs-134についての一回目と2回目を比較し、その差を計算すると29193ー27584.9=1608.1となる。脚注にある通り、ここでの1σの値は170.8であるので、この差は9σ以上の差ということになり、あまりにも大きく測定上の偏差ということでは到底説明できない。この点はCs-137でも同様に有意である。
東京都市大報告書の表下に描かれているグラフの表下に描かれているグラフからも、大きな変化は明瞭であり、A試料 (パウダー入り)のデータがこのように大きな変化を示しているのは何かの放射線強度に影響を与える何らかの現象存在を前提にしなければ説明はできない事象である。
これについて、原研は「高純度ゲルマニウム検出器を用いたY線測定装置で放射能測定を行った結果、汚染土壌へのナノ純銀パウダー混入の有無に限らず、土壌に含まれるセシウムの低減効果は認められませんでした」(乙18・9枚目) というのみで、上記の事象を分析し、統計的にどの程度の有意性を持った結果だったかを全く検証しようとしていないし、その事象を説明しようとする姿勢がまったくみられない。この姿勢は、まさにナノ純銀の効用を認めたくない姿勢の端的な表れとみるべきなのである。
東京都市大報告書の表下に描かれているグラフの表下に描かれているグラフからも、大きな変化は明瞭であり、A試料 (パウダー入り)のデータがこのように大きな変化を示しているのは何かの放射線強度に影響を与える何らかの現象存在を前提にしなければ説明はできない事象である。
これについて、原研は「高純度ゲルマニウム検出器を用いたY線測定装置で放射能測定を行った結果、汚染土壌へのナノ純銀パウダー混入の有無に限らず、土壌に含まれるセシウムの低減効果は認められませんでした」(乙18・9枚目) というのみで、上記の事象を分析し、統計的にどの程度の有意性を持った結果だったかを全く検証しようとしていないし、その事象を説明しようとする姿勢がまったくみられない。この姿勢は、まさにナノ純銀の効用を認めたくない姿勢の端的な表れとみるべきなのである。
(*1) 有意性の判断は、いわゆる統計上のずれがどの程度のものであれば標準偏差からのずれと して有意とみるかどうかというものである。そして標準偏差はシグマ=σによって示され、 1σの値は、平均値の平方根によって与えられる。上記の場合 Cs-134は初めの値が基準と なりこれを平均値とすることになるので、29193の平方根を求めることになる。その値は 170.8である。つまり1σは士170.8となり、2σは士170.8×2となる。
通常2σの中に95.5%の測定値が含まれるとされ、3σでは99.73%、4σで99.993%、5σ99.99994%となる。つまり測定値が2σを超えて表れた場合には、その測定値は標準の測定では出てこない数値であり、何か別の要素をもって説明を要するということになる。それが有意性の判断ということにもなる。
参考: 原研機構による第2回目の追試報告書
以上
0 件のコメント:
コメントを投稿