2015年12月27日日曜日

行政文書として存在しなかったホタル館記念コーナー設置文書

2015年12月2日に板橋区の松崎いたる区議が、「熱帯環境館植物館へのホタル生態環境館記念コーナー設置を見送ることについて(案)」という文書を公開した件を以前に記事にしました(以降、「記念コーナー設置文書」と呼びます)。

この文書には以下のような内容が記されていました(一部を抜粋して表示)。



ホタル生態環境館に関しては、懲戒免職処分を受けた元館長が処分を不服として板橋区を提訴したほか、事前通告無しに突然契約解除された業者も板橋区を提訴し、両案件とも係争中です。この時期に「記念コーナー」の設置を決めたり、見送ったりするのは時期尚早だと疑問に思った知人が、記念コーナー設置文書が正式な行政文書として発行されたか否かを確認するために板橋区に情報公開請求した結果通知が以下です。



「不存在」通知ですので、記念コーナー設置文書は正式の行政文書では無かったと分かりました。更に驚くべき事には、設置を決めた筈の文書も不存在でした。

松崎いたる区議が公開した記念コーナー設置文書に関する疑問点をまとめます。

  1. 正式な行政文書ではありませんでした。これは行政内部の検討資料なのでしょうか? だとすると、松崎いたる区議はどのようにして入手し、何の意図で公開したのでしょうか?
  2. 記念コーナー設置文書は、記念コーナーの設置が決まった前提で書かれています。しかし、設置を決めた行政文書も存在しませんでした。こんな事があり得るのでしょうか?
  3. 文書に記された設置場所が「熱帯環境植物館」になっていますが、正式名称は「熱帯環境植物館」です。主管課が作成した文書でこのような恥ずかしい間違いをするものでしょうか?
  4. 日付が11月27日となっており、ちょうど松崎いたる区議が板橋区「ホタル館問題」報告学習会を開催した前日です。これは偶然なのでしょうか?

以上

2015年12月7日月曜日

参考: ホタル関連の論文(2)

ホタル生態環境館のホームページに載っていた論文リストを発掘しました。参考までに載せておきます。フォーマットがちょっと変ですがご容赦を。

2008年
Adam South, Teiji Sota±, Norio Abe, Masahide Yuma+ and Sara M. Lewis
The production and transfer of spermatophores in three Asia species of Luciola fireflies
記載誌 「Journal of Insect Physiology」
epartment of Biology, Tufts University, Medford MA 02155, USA ±Department of Zoology, Graduate School of Science, Kyoto University,Kyoto, Japan Firefly Breeding Institute, Itabashi-Ward, Toyko, Japan +Department of Environmental Solution Technology, Ryukoku University, Otsu, Japan

2006年
阿部宣男・稲垣照美・干場英弘・穂積訓
水圏環境の自然回帰へ向けたホタル生態系の設計と構築 ~第二報、ホタル飼育空間せせらぎの構築~
日本生物地理学会会報第61巻2006年12月20日 P91-P98

2005年
阿部宣男・稲垣照美・松井政伸
ホタルの光と人の感性について-生物情報に基づいた光音相互変換システムの開発と福祉応用-  2005年11月 日本感性工学会 第6巻1号(通算13号)P61-71

2004年
阿部宣男・稲垣照美・干場英弘・穂積訓・大平武久
水圏環境の自然回帰へ向けたホタル生態系の設計と構築 ~第一報、閉鎖型ミニ生態系による模擬と7世代継承の成果~
日本生物地理学会会報第59巻2004年12月20日 P83-91

阿部宣男・稲垣照美・石川秀之・安達政伸・干場英弘
ゲンジボタルの発光バターンに及ぼす温度環境の影響 ~地理的偏差による2型分布に対する考察として~
日本生物地理学会会報第59巻2004年12月20日 P-75-81

2003年
阿部宣男(茨城大学大学院理工学研究科・板橋区ホタル飼育施設)、稲垣照美(茨城大学)、木村尚美(茨城大学大学院理工学研究科)、松井隆文(茨城大学大学院理工学研究科)、安久正紘(茨城大学大学院理工学研究科)
ホタルの光と人の感性について
「感性情報計測と福祉応用」感性工学研究論文集Vol.3No.2.pp.41-50(2003)

阿部宣男(茨城大学大学院理工学研究科・板橋区ホタル飼育施設)、稲垣照美(茨城大学)、石川秀之(茨城大学大学院理工学研究科)、松井隆文(茨城大学大学院理工学研究科)、安久正紘(茨城大学大学院理工学研究科)
ホタルの光と人の感性について
「発光現象のゆらぎ特性」感性工学研究論文集Vol.No.1.pp.35-44(2003)

阿部宣男(茨城大学)、稲垣照美(茨城大学)、安達政伸(茨城大学)
生物情報に基づいた光音相互変換システムの開発と福祉応用
日本感性工学会 第5回日本感性工学会大会予稿集 P.222(2003-10)

阿部宣男(板橋区ホタル飼育施設・茨城大学)
環境保全へ向けたせせらぎ空間へのホタル生態系接続と14世代継承の成果
全国魚道実践研究会議2003in岐阜 論文集(2003-10)

阿部宣男(茨城大学)、稲垣照美(茨城大学)、石川秀之(茨城大学)、松井隆文(茨城大学)、安久正紘(茨城大学)
「ホタルの光と人の感性について」 -発光現象のゆらぎ特性-
日本感性工学会(2003-09)

2002年
阿部宣男(板橋区ホタル飼育施設・茨城大学)、稲垣照美(茨城大学)、大平武久(板橋区ホタル飼育施設)、廣瀬満(株式会社広瀬)
ゲンジボタル・ヘイケボタル大量発生に向けたバイオ用土
日本感性工学会「エコデザイン2002ジャパンシンポジウム」(2002-12)

阿部宣男(茨城大学)、石川秀之(茨城大学)、稲垣照美(茨城大学)、安久正紘(茨城大学)
ホタルの発光パターンにおけるフラクタル次元とウェーブレット解析
日本感性工学、第4回日本感性工学会大会予稿集2002、p.186(2002-9)

阿部宣男(茨城大学)、木村尚美(茨城大学)、稲垣照美(茨城大学)、安久正紘(茨城大学)
ホタルの発光パターンにおける感性情報計測と福祉応用
日本感性工学、第4回 日本感性工学会大会予稿集2002、p.185(2002-9)

稲垣照美(茨城大学)、木村尚美(茨城大学)、安久正紘(茨城大学)
癒し空間創造へ向けたホタルの感性情報計測と福祉応用」(招待講演)
癒しの環境研究会、癒しの環境、Vol.7,No.3,p.30(2002-8)

N.Abe, T.Ohhira, H.Hoshiba and T.Inagaki
The Effect of Ambient Ecological Conditions on the Light Emission Pattern of Firefly
国際社会性昆虫学会(2002-8)

以上

参考: ホタル関連の論文(1)

阿部宣男博士が執筆者となっている論文を幾つか紹介します。板橋ホタル生態環境館のホームページで紹介されていたものもあるのですが、今はそのページは無くなってしまったようです。






また、以下の論文は、2004年に日本感性工学会論文賞を受賞しており、「茨城大学ニューズレター」に取り上げられていました。




以上

2015年12月6日日曜日

松崎いたる区議が公開した板橋区の資料への疑問点

板橋区の松崎いたる区議が、2015年12月2日に以下のツイートと共に、板橋区の検討資料と思われる文書を公開しました。このツイートは現在では削除されたようですが、その理由については明らかにされていません。


この文書は以下のようなものです。



文書を書き起こしてみました。

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平成27年11月27日
資源環境部環境課

熱帯環境館植物館へのホタル生態環境館記念コーナー
設置を見送ることについて(案)

1 背景

区は、平成27年3月末をもって廃止したホタル生態環境館については、地元の町会等の協力により長年ホタルの夜間特別公開等を実施してきたことや存続の要望もあったことなどから、記念コーナーを熱帯環境館植物館へ平成 27年度に設置することとしていた。

一方、区がホタルの生息数を調査したところ、元担当職員が毎年2万匹程度のホタルが羽化していたと報告していたにもかかわらず、あまりにも少な く乖離したものであった。また、平成7年度の20万匹にも上るホタル飼育数については、テレビ出演して上司の指示で虚偽報告したと、あり得ないことを公共の電波で主張した。さらに、元飼育担当職員がよりどころとしていたホタルの累代飼育については、区が平成26年度に行ったホタルのDNA解析により途切れていたことなども判明した。

このような状況のため、記念コーナーの設置について再検討したが、元担当職員からの報告のあった飼育数や累代飼育についての事実を確認できないなかで記念コーナーを設置することは、区民感情にそぐわないと判断し見送ることとした。

2 その他

平成27年度予算で「熱帯館コーナーパネル作成委託」として30万円を計上していたが、第4号補正にて減額を行う。

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さて、この文書については、たいへん不可解な点が幾つもあります。
  1. 「案」とされている所を見ると、行政の内部文書であると思われますが、これをどのようにして松崎いたる区議が入手できたのか? 板橋区は区会議員からの求めがあれば、「案」段階の文書を公開するのでしょうか? それとも、資源環境部環境課が松崎いたる区議と緊密な関係にあるため、特別に内部情報を提供したのでしょうか? 区議会等で、文書提供の経緯と根拠について議論されることを望みます。
  2. 「区がホタルの生息数を調査したところ、元担当職員が毎年2万匹程度のホタルが羽化していたと報告していたにもかかわらず、あまりにも少な く乖離したものであった」とありますが、このホタル生息数調査については様々な疑問があり、何より結果から見て、調査結果が間違っていた事は明らかです。いまだに板橋区がこの調査の正当性を主張しているのは問題だと思います。
  3. 「平成7年度の20万匹にも上るホタル飼育数については、テレビ出演して上司の指示で虚偽報告したと、あり得ないことを公共の電波で主張した」とありますが、なぜこれが「あり得ない」のか、根拠が示されていません。「板橋区行政は無謬なり」という神話を語っているだけに見えます。また、本当に「あり得ない」と証明できるなら、板橋区がこの番組に対して抗議すべきだと思いますが、そのような抗議の事実はありません。
  4. 「元飼育担当職員がよりどころとしていたホタルの累代飼育」とありますが、ホタルの累代飼育は「板橋区」が対外的にアピールしてきたものであり、ホタルの故郷の大熊町長へも坂本健区長が累代飼育のことを説明しています(下記参考資料)。まるで元飼育担当職員だけが主張しているかのような書き方はたいへん不適切だと思います。
  5. 「元飼育担当職員がよりどころとしていたホタルの累代飼育については、区が平成26年度に行ったホタルのDNA解析により途切れていた」とありますが、板橋区は関連する裁判の中で、累代飼育があったことを認めています。また、板橋区が外部にアピールしていた累代飼育が途切れていたとすれば、たいへんな不祥事ですが、板橋区はホタル館の件について管理職への処分を一切行っていません。これは暗に累代飼育があった事をも認めているのでしょう。
    これらの板橋区の主張を整合性を持った解釈がないわけではありません。元飼育担当職員が解任された後、つまり、2014年2月以降の飼育を引き継いだ新たな業者がホタルを持込み、累代飼育を途切らせた、という仮説です。板橋区がこのように考えて情報を発信しているのであれば、それを明確に主張していただきたいと思います。
  6. 「区民感情にそぐわないと判断し」とありますが、ホタル館の事件については、区民から廃止に抗議する文書が公式に板橋区に提出され、その中で、区の管理責任を明らかにし、説明責任を果たすべきだと要求しています。記念コーナーの設置を見送る前に、まず、この区民の要望に応えるべきではないでしょうか。

参考資料:



以上