2016年3月27日日曜日

日本原子力研究開発機構が除染技術の普及妨害で提訴されていた(2)

以前に「日本原子力研究開発機構が除染技術の普及妨害で提訴されていた」という記事でお伝えした事件が、月刊FACTAで取り上げられてました。



月刊FACTAは年間購読契約でのみ読める雑誌ですが、置いてある図書館もあるので、記事を読んできました。記事が伝えているのは、ネイチャーズ社の元社長である松村栄治氏が原子力機構を訴えた件であり、概要は赤旗の記事や記者会見で語られているのと同じです。

この記事でたいへん興味深かったのは以下の点です。

  • 記事の中で、『・・・「文部科学省原子力課に出向経験を持つ白鳥氏は、原子力ムラの「ワル(陰の実力者)」と呼ばれる』と、訴えられた原子力機構の次長である白鳥芳武氏を名指しで批判していること。
  • 白鳥芳武氏が、『・・・「公募とは別に福島でフィールド試験をしたい」と提案。旧知の東京都市大学原子力研究所の女性准教授を松村氏に紹介し、「よいデータを取ってほしい」とその背中を押した』と書かれており、ナノ銀による放射線低減の追試を行った岡田往子准教授と思われる人物が登場していること。
  • 原子力機構の内情を知る科学記者の発言として、『3・11後、原子力機構が食い扶持を求めたのは、除染技術の独占でした。その予算規模は震災前の1830億円から翌年度に2100億円に膨らんだ。除染事業のおかげです。除染技術を牛耳るのが、陰の実力者である白鳥氏のミッションでした』と紹介しており、原子力機構が組織として除染技術独占へ関与してきた疑いを示していること。

この裁判の経緯と、この裁判で明らかになった事に今後も注目していきたいと思います。赤旗によると4月25日に結審予定。

以上

2016年3月21日月曜日

ナノ銀による放射線低減現象の原研追試で観測された放射線強度の有意な変動

阿部宣男博士が名誉毀損で松崎いたる区議を訴えた裁判に出された資料が、松崎いたる被告からの依頼で以下に公開されています。(原告側の同意は得ていない模様)
http://www.i-foe.org/h26wa29256

3月14日に行われた非公開での協議に提出された原告側の準備書面の一部が公開されています。


これらの準備書面はホタル生態環境館での活動の経緯を詳細に記述しており、たいへん意義のある資料となっています。この中で、私が今回最も注目したのは、原子力機構(以下、原研)の行ったナノ銀による放射線低減現象の追試結果についての論述です。

原研は追試を2回行っているのですが、2回目の追試で、とても計測誤差とは考えられないような大きな放射線量の変動が観測されているのです。大きな所では、実に5%以上の放射線の低減が見られます。原研の報告書には「セシウムの低減効果は認められませんでした」と切って捨てられていますが、原因追究が必要なデータでしょう。原研はデータを見る能力が無いのでしょうか?

以下に原告の準備書面の該当部分のみをテキスト化したものを載せます。※印をつけた文章は私のコメントです。

第2回目試験のA土壌の結果分析からみた問題点


2回目のA土壌の試験結果については、下記のような数値となっている。若干原告サイドで加工して、その測定結果について以下のような表を掲示する。

表1 A土壌の計測データと1回目基準の相対強度計算値.

1回目測定 2回目測定 3回目測定 4回目測定 5回目測定
測定時間 [sec] 600 619 619 620 1800
Cs-134 29193 28458.4 28408.1 29902.8 85376.8
(27584.9) (27536.1) (28938.2) (28458.9)
Cs-137 39349 38400.6 38405.7 40209.7 115914.8
(37221.9) (37226.8) (38912.6) (38638.3)
合計 68542 66859 66813.8 70112.5 201291.6
Cs-134 1.000 0.945 0.943 0.991 0.975
Cs-137 1.000 0.946 0.946 0.989 0.982
合計 1.000 0.946 0.945 0.990 0.979

* 2回目以降についての下段の括弧の中の数値は1回目の測定と同様に、600秒に置き換え
て計算したものである。(※ 原研がなぜ619秒や620秒という半端な時間で測定しているのか疑問です。最初が600秒であれば他も600秒に揃えるのが普通だと思うのですが)


表1を見て、まず気が付くことは、2回目の測定で Cs-134 と Cs-137の両成分ともに、1.0から0.945と0.946と比較的大きな比率:5.5%、5.4%程度の減衰を示していることである。その後、第3回目も似たような傾向 (Cs-134:0.943, Cs-137:0.946) となっており、逆に、第4回目はそこから4%以上増加している。そして、再び5回目においては2回目3回目のレベルには届かないものの再度減じている。
(※ Cs-137の半減期が約30年という事を思い出してください。短期間の測定で5%もの減衰が観測されるのが異常である事は直感的にも分かります)

以上の第2回目以降の減衰と第4回目の増加と5回目の再度の減衰は、計数の統計的な揺らぎの大きさから考えると明らかに有意な変化(*1)である。例えば Cs-134についての一回目と2回目を比較し、その差を計算すると29193ー27584.9=1608.1となる。脚注にある通り、ここでの1σの値は170.8であるので、この差は9σ以上の差ということになり、あまりにも大きく測定上の偏差ということでは到底説明できない。この点はCs-137でも同様に有意である。

東京都市大報告書の表下に描かれているグラフの表下に描かれているグラフからも、大きな変化は明瞭であり、A試料 (パウダー入り)のデータがこのように大きな変化を示しているのは何かの放射線強度に影響を与える何らかの現象存在を前提にしなければ説明はできない事象である。

これについて、原研は「高純度ゲルマニウム検出器を用いたY線測定装置で放射能測定を行った結果、汚染土壌へのナノ純銀パウダー混入の有無に限らず、土壌に含まれるセシウムの低減効果は認められませんでした」(乙18・9枚目) というのみで、上記の事象を分析し、統計的にどの程度の有意性を持った結果だったかを全く検証しようとしていないし、その事象を説明しようとする姿勢がまったくみられない。この姿勢は、まさにナノ純銀の効用を認めたくない姿勢の端的な表れとみるべきなのである。

(*1) 有意性の判断は、いわゆる統計上のずれがどの程度のものであれば標準偏差からのずれと して有意とみるかどうかというものである。そして標準偏差はシグマ=σによって示され、 1σの値は、平均値の平方根によって与えられる。上記の場合 Cs-134は初めの値が基準と なりこれを平均値とすることになるので、29193の平方根を求めることになる。その値は 170.8である。つまり1σは士170.8となり、2σは士170.8×2となる。
通常2σの中に95.5%の測定値が含まれるとされ、3σでは99.73%、4σで99.993%、5σ99.99994%となる。つまり測定値が2σを超えて表れた場合には、その測定値は標準の測定では出てこない数値であり、何か別の要素をもって説明を要するということになる。それが有意性の判断ということにもなる。


参考: 原研機構による第2回目の追試報告書



以上



2016年3月18日金曜日

共産党 小池晃政策委員長の発言を松崎いたる区議が批判

3月11日に安倍晋三首相の想像を越えた読み間違えが話題となりました。


上記の朝日新聞デジタルの記事から引用します。
 11日の参院本会議で、安倍晋三首相が待機児童問題について答弁した際、「子どもが生まれたのに保育所に預けられない」とする部分を「保健所に」と読み間違え、議場が騒然となる場面があった。首相は間違いに気付き、すぐ訂正した。
 「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名のブログをきっかけに待機児童対策への不満が高まっているさなかだけに、野党からは「(不満に)耳を傾けるのであれば保育所を保健所と間違えない」(共産党の小池晃政策委員長)、「保健所となるとニュアンスが少し違ってくるので、やや感じが悪い」(民主党の加藤敏幸参院国対委員長)などの批判が出た。
上記の記事にあるように、共産党の小池晃政策委員長が会議が終わった後の記者会見でこの問題に言及しました。驚いたことに、この小池議員の発言に対して、板橋区の共産党の松崎いたる区議が批判を展開します。



この発言に対し、産経新聞の誤解しやすい記事をみて誤読したのだろうから、お詫びして削除してはどうかという意見が寄せられました。しかし、松崎いたる区議は、誤読ではないと反論します。まるで、誤読されるような発言をした小池議員が悪いと言わんばかりの反応です。





実際の小池議員の発言はどうだったのでしょうか。以下の動画の6分35秒あたりから、その発言が始まります。



この発言を文字起こししてくれた親切なブログ〜zionsの日記〜がありました。ありがとうございます。以下に発言部分を引用します(赤字は引用者による)。
Q
先ほどの参院本会議で、吉良さんへの総理の答弁で、言い間違いが消費増税の10%への引き上げの時期について、昨年4月と言ったりとかですね、あとまあ保育所を保健所と言い間違えたり、言い間違いが相次ぎましたけども、総理が疲れてるのではと、そう言う声もありますが、そういった答弁と、どういう風にご覧になっていたのかなと、お聞かせください。
A
まあ、お疲れなのかなあという感じを僕は受けましたけども。
ただね、疲れたじゃ済まされる話では無くって、やっぱり子供をね、保育所に預けた経験があって、そのことで苦労した経験がある、あるいはそういった苦労してる人の声に耳を傾けた事があれば、保育所を保健所って間違える事は無いですよね
だからやっぱりこの問題に対するこう、ちょっと、本当に真剣に向き合う姿勢なのかなあと感じます
まあ、言い間違いだという事で直ぐに訂正されたという事なので、それ以上この問題で責任追及する事は無いとは思いますけども、まあ、私の個人的な感想としては、こういう問題で苦労していたら、あまりああいう言い間違いはしないんじゃないかなあという、感じはします。
保育所を保育園と間違えるとかね、言い間違いえる、そういうのはあるかも知れないけど。と思いますが、はい。
まあ、いずれにしてもでも言い間違いという事で処理されるかなあとは思いますんで、これであまり大事にするような話でも無いかなあという風に思います。
総理にはきちんと、答弁して頂きたいなあと、いう事は思いますけど。
どうでしょう。この発言の中から「こういう問題で苦労していたら」だけを取り上げて、子供を持たない人への配慮に欠けると批判するのは、私は妥当では無いと思います。文章全体を見れば、保育所に入りたくても入れない家庭が沢山あるという問題を解決しようと苦労していたらこのような言い間違いをしないだろう、という趣旨の方が近いと思います。

安倍晋三首相の問題発言(言い間違い)には言及せず、これを批判する自党の政策委員長の発言のみを取り上げて批判する共産党議員がいることに驚きました。

以上