2017年2月25日土曜日

RikaTan 2017年4月号にあるホタル成虫持ち込み写真のウソ

左巻健男氏が編集長を務めるRikaTan(理科の探検)誌の2017年4月号が2月25日に発売されました。今回の特集は「ニセ科学を斬る! 2017」となっており、松崎いたる区議が「住民の行政を惑わした「ホタルの光」」という記事を執筆しています。


早速購入して目を通りました。既に板橋区議会にホタル生態環境館の元館長の懲戒免職処分を取り消す和解案が提出された後ですが、その情報は全く反映されておらず、また、根拠が明示されない主張が多くて、たいへん残念でした。

その記事の中で、非常に問題のある記述があったので以下に引用します。


ここでは、板橋区が出した「板橋区ホタル生態環境館のホタル等生息調査結果と元飼育担当職員の報告数との乖離について」(以下、乖離報告書)に掲載された箱に入ったホタルの写真が使われています。そして、「持ち込まれていたホタル成虫」とキャプションがついていて、あたかもホタル成虫が持ち込まれた際の証拠写真であるかのように扱っています。

しかし、これがホタル成虫の持ち込みを示す写真でないことは、板橋区議会の答弁の中に明確に示されています。松島道昌区議の追及に対して、以下の答弁で資源環境部参事が明確に「持ち込みそのものとは関係ない写真」だと言っています。


2015.01.20 : 平成27年 区民環境委員会 本文 より引用(赤字は引用者による)

◯松島道昌
 幾つかお尋ねをしたいと思います。
 この報告書は非常にショックな報告書であるというのは私も同感でありまして、と申しますのは、震災直後から、私、福島にボランティアで入っています。大熊町の方々は皆、仮設住宅にほとんどの方々が、町役場は会津若松市にあります。
<略>
 証言があったということでありますが、先ほどすえよし委員からお話がありました。1つのこういうものを提出するときに、証言だけとは限らず、さまざまな証拠をそろえなきゃいけないわけでありますけれども、まず、15ページに写真があります、これ。
 これは、本件とは関係ないですよね。いわゆる持ち込みとは関係ないものでありますよね。それはいかがですか

◯環境課長事務取扱資源環境部参事
 持ち込みそのものとは関係ない写真ではございます

◯松島道昌
 こういう関係のない、いわばあたかも持ち込まれたように類推をされるような写真を添付するというのは、これはちょっと不適切だというふうに私は思いますね。これを見た区民の方が、ああやっぱり持ってきたんじゃないかというふうに結果として思われてしまうでしょうね。心証というものはそういうものだと思います。本件とは関係ないということを申し上げておきます。
<略>


ちなみに、乖離報告書の「15ページ」は以下のようになっています。ここでのキャプションは「ホタル生態環境館に運ばれたホタル」と慎重に言葉が選ばれているのが分かります。

この答弁があった区民環境委員会には、松崎いたる区議も副委員長として出席しています(名簿を以下に示します)。つまり、上記の答弁は聞いておられた筈です。


2015.01.20 : 平成27年 区民環境委員会 名簿 から引用

           区 民 環 境 委 員 会 記 録

開会年月日  平成27年1月20日(火)
開会時刻   午前10時00分
閉会時刻   午後 3時12分
開会場所   第3委員会室
議   題  別紙運営次第のとおり
出席委員
 委 員 長   小 林 公 彦       副委員長    松 崎 いたる
 委   員   井 上 温 子       委   員   安 井 一 郎
 委   員   し ば 佳代子       委   員   田 中 いさお
 委   員   松 島 道 昌       委   員   菊 田 順 一
 委   員   すえよし不二夫


上記の答弁を聞いていたにも関わらず、ホタル成虫が持ち込まれていた証拠であるかのように、この写真を使っているのですから、これは単なる「間違い」ではなく、自分の主張の都合に合わせた「ウソ」ではないでしょうか?

また、このような事実に反する記述を掲載しているRikaTan誌は、記事を載せる際に事実確認を行わないのでしょうか? これでは事実に立脚しないニセ科学と同じではないでしょうか?


以上

2017年2月24日金曜日

取消が審議される懲戒免職処分の異常な経過

板橋区ホタル生態環境館を巡る事件は、2014年3月28日に懲戒免職処分を受けた阿部宣男博士(当時館長)に対する処分取消の議案が区議会に提出され、真相解明に向けた大きな山場にさしかかりつつあります。

このブログでは、この事件の端緒として2014年1月27日に行われたホタル生息数調査を取り上げてきました。しかし、懲戒免職処分取消請求裁判の中で、それ以前から、阿部博士の懲戒免職処分に向けた動きが板橋区にあったこと、しかも、策動していたのは直属の上司である資源環境部長・山崎智通氏(当時)と環境課長・井上正三氏(当時)であったことが明らかにされてきました。

今回、原告側の関係者に色々とお話を伺ったので、従来、あまり公になっていなかった板橋区の動きについて、極めて重要だと思うポイントをいくつか指摘しておきます。

1)事故報告書

2013年(平成25年)9月26日付けで、資源環境部長・山崎氏(当時)が作成した「事故報告について」と題する文書があります。(写真1)
情報公開請求で明らかになったこの事故報告書の対象は阿部博士です。内容はほぼ全て黒塗りになっています。しかし、「4.参考事項」の「(1)司法警察機関との関わり」の項に何かが書かれていることがわかります。作成者である山崎氏は裁判の証言台で内容を問われましたが、あろうことか「忘れた」と言って答えなかったそうです。
事故報告書を出した時点で、山崎氏は阿部博士を刑事問題で免職まで陥れるつもりだったと思われます。ところが、警察による調査でも何も問題は発見されず、結局、懲戒免職処分説明書(写真2)の「刑事事件との関係」には「なし」と記載されています。

写真1:事故報告書



写真2:懲戒処分説明書


2)警察問題があるとの印象操作

事故報告がなされた場合には、通常区長が速やかに監察命令を出さなければなりません。(東京都板橋区服務監察規程 第9条を参照)
http://www3.e-reikinet.jp/itabashi/d1w_reiki/413902400014000000MH/413902400014000000MH/413902400014000000MH_j.html
(非行及び事故の報告等)
第9条 部長等は、第4条第1号、第2号又は第5号に該当する事実を知ったときは、遅滞なく別記様式により、主席監察員を経て区長に報告しなければならない。
2 区長は、前項の報告を受理したときは、監察員に事故監察を命ずるものとする。
しかし、この時の監察命令が出されたのは、事故報告から4か月が経過した2014年(平成26年)1月30日でした。これは1月27日のホタル生息数調査(※)の3日後です。山崎・井上両氏は間違ったホタル生息数調査でホタルが飼育されていないという印象を植え付けました。更には、山崎・井上両氏は区議会で警察の捜査が継続していると繰り返し答弁し、阿部博士があたかも警察問題を抱えている印象を作り上げました。

(※)このホタル生息数調査が調査の名に値しない酷いものだった事は、何度もこのブログで取り上げてきました。

3)懲戒分限委員会の外部委員への情報提供

職員の懲戒処分を決める懲戒分限委員会には、公平性を保つために外部の弁護士が委員として参加しています。外部委員である弁護士の名前は秘密にされていましたが、山崎・井上両氏はこの外部委員弁護士に対して、複数回の相談を持ち掛けていました。
つまり、外部委員として公正さを要求される弁護士が事前に懲戒対象者のマイナス情報を受けていたのです。これは看過できない不公正です。

板橋区議会への期待

以上のように本件処分は異常な経過を辿りました。端的に言えば、直属の上司が部下の職員を懲戒免職に陥れようとしていたとしか思えません。阿部博士の弁護士らによって、この異常性が法廷で浮き彫りになり、そのこともあって、裁判所は和解に向かったと思われます。

これから和解案の審議が始まる板橋区議会では、山崎・井上両氏の異常な行動について改めて分析し、なぜ刑事事件化を目論んでまで阿部博士を陥れようと考えていたのか、問題の本質と真相を抉り出して欲しいです。

また、(1)で取り上げた2013年9月26日付けの「事故報告について」と題する文書の内容は、板橋区のどこに問題があったのかを明確にするためのもっとも根本的な資料です。当然のことながら、今回の区議会での審議の中で、「黒塗り」ではなく内容を開示させることと思います。議会が行政監視の役割を十分に尽くされることを期待しています。

以上