2015年1月28日水曜日

ホタル生態環境館の累代飼育を否定する板橋区の報告書への反論文書

2015年1月20日に板橋区議会の区民環境委員会が開催され、そこでホタル生態環境館に関する陳情2件とホタルの調査結果と報告数の乖離についての報告が行われました。


この報告はPDF文書として以下に公開されました(以下、「乖離報告」と呼びます)。
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_oshirase/066/attached/attach_66991_1.pdf 
板橋区ホタル生態環境館のホタル等生息調査結果と元飼育担当職員の報告数との乖離について(報告)
乖離報告では以下のように総括しており、これまで板橋区が誇りにしてきたホタル累代飼育を否定し、外部から持ち込まれたものだと結論付けています。
Ⅸ 総括
夜間特別公開時に約 20,000 匹が飛翔していたとされるものが、ホタル生息調査結果の推計 23 匹、実際に羽化したのは 211 匹程度と少なく、平成 25 年度の羽化数に対し、約 19,400 匹強(99%)もの乖離があった。また、平成 25 年度のホタルの飼育環境には、特段の異常はなく、大量死の事実もなかった。例年、羽化していたとされる約 20,000 匹に足りないホタルは、関係者のホタルの持込み証言とそれを裏付ける宅配業者の配送伝票の物証により、ホタルが持ち込まれていたものと考えられる。
また、生息調査で 70,000 匹が、流されたという元飼育担当職員の発言についても、その根拠(物証)はなく、また、そのような事実もなかった。
さらに、塩基配列解析(DNA)調査報告によると、ホタル生態環境館において平成 26 年に羽化または発見されたゲンジホタルのDNA調査では、福島県大熊町のホタルでなく、西日本地方のDNAを持ったゲンジボタルであることが明らかになった。これは、西日本地方のDNAを持ったホタルが人為的に移動されていた可能性が高いということを示しており、元飼育担当職員が述べていた累代飼育がなされていたなら、西日本地方のホタルが存在するというのは不自然である。
以上のことから、ホタル生態環境館のホタルは、外部から人為的移動により持ち込まれ、累代飼育も行われていなかったものと考えられる。このことは、累代に及ぶ板橋育ちのホタルが現時点において存在していないことを意味するものである。
しかし、この文書の中には印象操作としか思えない記述が散見され、さらに、筆者が指摘してきた生息調査の問題も全く解明されておらず、一読して不信感を抱くものでした。そのため、元飼育職員の関係者に連絡を取り、乖離報告の内容についての確認を行おうとしたところ、代理人(弁護士)が記述した反論文書を送っていただきました。

まだ完成版ではないとの事ですが、論理的かつかなり網羅的に反論をまとめていただいています。乖離報告と合わせて読むことをお勧めします。もし訂正が入った場合には随時差し替えようと思います。




冒頭、以下のような驚くべき問題指摘から始まっています(文中の氏名を○○に置き換えました)。
1 全体を通して
本件報告に至るまでの手続及び報告の中での手続き上の説明には大きな問題を指摘せざるを得ないとともに、その内容は欺瞞に満ちている。
本件報告には「平成 25 年度より、ホタル生態環境館のあり方について、資源環境部にあり方検討会を設置し、検討を行ってきた」(「Ⅱ経緯」)との記述がある。
しかし、そもそもこの「あり方検討会」なる存在を○○氏は知らないし、そのような存在を聞かされたこともない。
この後にも、元飼育職員に対して「あり方検討会」がヒヤリングを行ってきた事実はまったく存在しないという驚きの指摘が続きます。そして、第二章では報告書の内容について専門性の欠如や論拠としている内容の矛盾等について丁寧に指摘しています。
2 内容上の検討
はじめに
本件報告には様々な問題があるが、専門性の欠如、客観性の欠如、論拠としている内容の矛盾、○○氏の実践の無視等を指摘することができる。以下詳論する。
この文書の読み解きは別の機会にチャレンジしてみたいと思います。本日はまずは反論文書をご紹介させていただきました。


以上

2015年1月12日月曜日

飼育業者に対する板橋区の事情聴取に関するパワハラ疑惑

ホタル生態環境館に関する問題の中でたいへん気になっている事件があります。ホタル生息調査の直後まで板橋区からホタルの飼育業務を委託されていた「むし企画」という業者に対するパワハラ疑惑です。むし企画は板橋区から2014年1月30日に電話で契約解除を通告されました(2月1日付けで契約解除)。

この件に関連して、日本共産党の松崎いたる区議は、ご自身のブログに以下のように書いています。引用します。(ちなみに、松崎いたる区議は、元館長から名誉毀損で訴訟を起こされています。その訴状と思われる文書は ここ に公開されています)


以下のように書かれています。
元職員と「むし企画」は、従業員が「痴呆」になり、代表が「精神的な打撃を被」るほど、区側からヒドイ扱いを受けたと訴えているのですが、区側が質問している①②③の内容はどれも委託事業者ならすぐに答えることのできる(答えなければならない)基本的なことばかりです。
かりに「事実に基づかない憶測による質問」があったとしても、事実を知っているものであれば、すぐに回答し、それ以上の問題に発展することはありません。
ここだけを見ると、業務上の事情聴取であって、日常行われる業務管理の一環のように見えます。しかし、2014年4月3日に行われた前館長の懲戒免職処分取り消し訴訟提起の記者会見で配布された資料に記された前後の経緯を見ると、とても「業務上の事情聴取」とは思えないのです。

また、本件については、契約解除の無効と契約解除に至るまでの板橋区管理職の異様な行動と原告の精神的損害への賠償を求めて、むし企画が板橋区を提訴しています。

以下、記者会見資料から私が読み取った範囲で、前後の経緯を合わせて説明してみます。

来年度の契約の話があるので来てほしいと言われたむし企画の代表は、2013年8月26日に板橋区役所に出向きました。ところが、資源環境部の管理職(部長や課長)に聴取されたのは、来年度の契約の話ではなく、現契約の履行に関する問題指摘でした。以下のような事を言われたそうです。
  • そもそも納品しているのか。
  • 委託の費用はどのように使われているのか。
  • 人件費はいくらなのか。人件費と称して他の用途に流れているのではないか。
契約書と違うことが行われていて、頭数も違うし、提出している書類が偽造であるなど、契約不履行で損害賠償ものであるというような発言までされたそうです。これらの聴取内容は、余りに一方的で事実無根であったため、代表は非常に困惑し、精神的にも打撃を受けました。

8月29日にも再び聴取が行われました。この時は、契約の履行内容ではなく、事前説明にはなかった元館長の方へと話題が移りました。代表は以下のように問われたそうです。
  • 阿部から言われて、名義のみの委託契約なのではないか。実質的に動かしているのは阿部であって、全部金も阿部に回っているのではないか?
  • 責任をかぶりますか? 今回の問題を指摘されたときに責任をとれるのか?
そればかりか、課長は、「言葉で言えないのであれば、OKならば頭を下げるように」と指示しながら、頭を下げようとしない代表に対して「OKだね、OKだね」と繰り返したそうです

更に、9月10日には、入院中の代表の携帯電話に課長から連絡が入り、「館長に委託費が渡っているのではないか」と断定的に表現しました。そんな事実はないと代表が言っても、課長は聞き入れず、認めないと責任を取ってもらうと脅迫ともとれる言動を繰り返したそうです。

この後、代表からの依頼を受けて、弁護士が2013年10月13日付けの内容証明郵便による通知書を板橋区役所に送付し、以下を区役所に求めました。
  • 今回の事情聴取の上記のような内容について、それがなぜ行われたのかについて責任ある説明を文書及び面談にて求めるとともに、事実に基づかずに聴取を実施したことそのものに謝罪を求めます。
  • また、部長・課長は、通知人に了解なくレコーダーを使って録音をされておりました。通知人としてはその録音されたデータを渡していただくように求めます。
しかし、区役所からはこの通知に対する誠意ある応答はなく、いわば放置されていたそうです。

その後、2014年1月27日に至るまで代表には何も連絡のないまま、1月27日に突如実施された生息調査の結果を踏まえて、1月30日に代表の携帯電話に契約解除の通知があり、区は同日付けで契約解除の文書を代表に送付しました。解除理由は「受託者が受託業務を履行できないことが明らかであるため」となっていました。1月27日から解除までの間に代表には何の連絡もなかったそうです。

1月27日の調査のあと、驚くべきことに、警視庁第二課がホタル生態環境館の関係者から事情聴取を始めました。最初に聴取されたのは代表で、3月20日に最後(3回目)の事情聴取を受けました。代表以外の方々も対象となりました。

このような事情聴取は、区からの働きかけがなければ始まるはずもなく、根拠らしい根拠のないままに警察が動く事態を「異常としか映りません」と資料には書かれています。なお、代表への聴取にて供述調書は一切作成されずに終了しているとのことです。

すでに提訴されている案件なので、今後の推移を見守りたいと思いますが、上記のような発注元管理職による業者の「詰問」が本当にあったとしたら、パワハラ(パワーハラスメント)の疑いがあると私は思います。板橋区は裁判と並行して、真相を糾明し、再発防止策を立てるべきではないでしょうか。

また、この資料を見ておられる筈の松崎いたる区議が、引用した部分のみを取り上げて、区側の対応に問題は無かったと主張されている点に違和感を覚えます。

以上

板橋区のホタル生息調査の設計書は存在しなかった

板橋区のホタル生息調査の報告書の誤り」の記事で、この報告書に含まれる重大な誤り~時期も方法も体長推定も間違っていた~を指摘しました。そうすると、この間違った調査がどのようにして「設計」されたのかが気になります。どのような根拠で、幼虫を探し難い時期を選び、幼虫を殺してしまうリスクのある調査方法を選び、杜撰な体長推定をしたのでしょうか?

板橋区がホタル生息調査を行うにあたって、調査を担当した「自然教育研究センター」との間で契約が交わされました。 契約書では、調査計画書の提出が義務付けられていました。そのため、この問題に関心を持った人が、板橋区にこの「調査計画書」を情報公開請求しました。ここに根拠が示されている筈です。

ところが、返ってきたのは「公文書不存在通知書」でした。調査計画書は存在しなかったのです。


これは以下の点で大きな問題です。
  • 提出されるべきものが提出されずに委託が行われているのは契約違反。行政の手続きとしても不当。この業者に対しての不当な利益供与(義務付けられた書類提出を事実上免除している)の疑いもあるのでは?
  • 設計無しにどのようにして調査を行ったのか? 誰がどのような根拠に基づいてどのように調査を設計したのか? 調査の正しさを根拠付けるものが無かったとすると、そもそも調査や報告の正当性は極めて疑わしいものとなります。
板橋区や板橋区区会議員には、こういった行政のプロセスの不正を是非追及していただきたいと思います。

この記事を書いていて思い出したのですが、Twitterで日本共産党の松崎いたる区議に、この計画書を出すべきだと要求したことがあるのですが、全く聞き入れて貰えませんでした。松崎いたる区議は、元職員の責任追及には熱心ですが、板橋区行政の責任には甘いようです。ちなみに、松崎いたる区議は、元職員から名誉毀損で訴訟を起こされています。その訴状と思われる文書は ここ に公開されています。

以上