2016年5月21日土曜日

板橋区によるホタル持ち込み主張の問題点

ホタル生態環境館の元館長は、板橋区に対して複数の訴えを起こしていますが、この裁判の中で、板橋区が重大な主張をしていた事が分かりました。

2014年1月27日に突然実施された板橋区によるホタル生息数調査では、ホタル幼虫が2匹しか発見されず、推定23匹として正式に報告されました。ところが、その後のホタルの羽化数は200匹を越えたと正式に報告されており、2つの報告の間に重大な矛盾がありました

私は、ホタル生息数調査に不備があって、殆どの幼虫が見逃されたのだと考えていますが、板橋区の考えは違いました。板橋区は1月27日の調査後から羽化までの間にホタルが持ち込まれたと主張しました

以下に2016年3月に提出された板橋区作成の準備書面から引用します(赤字は引用者による)。
1 原告主張のホタル飼育実態がないこと (平成 25 年度) 
・・・<略> 
(2) しかし、少なくとも、平成25年度(平成25年4月1日から同26年3 月31日まで) については、そのような数のホタルが飼育さ れていた形跡がない。
被告が平成 26年1月27日にホタル施設の生息調査(ホタル用水路の一部の区画からホタル等を採取し、全体数を推定する調査)を行ったところ 、生存が確認されたのは 、ホタル(幼虫)は2匹、 カワニナ ( ホタルの餌となる貝)は85匹であった(なお、これを基にした施設内全体に生存する推定個体数はホタル23匹、カワニナ963 匹である。乙第47 号証 9頁及び 11頁)。その後羽化した(成虫になった)ホタルの数を実際に数えたところ、 2 1 1匹 ( 平成26 年 9 月 14 日現在) というものであった(乙第 44 号証・ 10 頁及 び 11 頁。なお、この数字は 1月の推定数と乖離しているが、その原因は、1月の調査後にホタル施設にホタルが持ち込まれたことによるものである。)。 
・・・<略>
板橋区の主張から以下のような疑問が出てきます。どちらも、区民や納税者に対する重大な背信行為であり、区議会での追及を期待したいですね。

(1) 誰がホタルを持ち込んだのか


板橋区の上記の文章では、持ち込んだ主体者が誰なのかは明かされていません。しかし、1月27日の生息数調査以降、元館長は配置転換され、鍵は全て別のものに取り替えられ、更に、監視カメラが複数台設置されて、ホタル生態環境館は異常とも思える監視下に置かれていました。
これだけ板橋区が監視しており、また、その後、不法侵入は報告されていない事を考えると、ホタルの持ち込みは板橋区の承認のもとに行われたと考えるのが妥当でしょう。累代飼育を誇りにし、ホタルの持ち込みには重大な問題があると認識している筈の板橋区が自らホタル持ち込みを認めていたとすれば、極めて重大な背信行為です。

(2) DNA解析は何のために実施したのか?

板橋区がホタルの持ち込みを認識していたのだとすると、2015年1月20日に発表された「板橋区ホタル生態環境館のホタル等生息調査結果と元飼育担当職員の報告数との乖離について(報告)」(以降、乖離報告書と呼ぶ)で報告されたホタルの遺伝子解析(DNA解析)を板橋区はどのような意図で行ったのでしょうか?
ホタルを持ち込んだのですから、ホタル生態環境館で飼育していたホタルとは別のDNAが検出されても何の不思議もありません。

ところが、板橋区は解離報告書の中で以下のように結論づけ、DNA分析の結果をもって、累代飼育を否定する根拠としています。板橋区自身がホタルの持ち込みを承認した上で、このような報告を行っていたのなら、板橋区が意図的に元館長に罪をなすりつけようとしたのではないでしょうか?
乖離報告書から引用 
<引用開始> さらに、塩基配列解析(DNA)調査報告によると、ホタル生態環境館において平成 26 年に羽化または発見されたゲンジホタルのDNA調査では、福島県大熊町のホタルでなく、西日本地方のDNAを持ったゲンジボタルであることが明らかになった。これは、西日本地方のDNAを持ったホタルが人為的に移動されていた可能性が高いということを示しており、元飼育担当職員が述べていた累代飼育がなされていたなら、西日本地方のホタルが存在するというのは不自然である。
以上のことから、ホタル生態環境館のホタルは、外部から人為的移動により持ち込まれ、累代飼育も行われていなかったものと考えられる。このことは、累代に及ぶ板橋育ちのホタルが現時点において存在していないことを意味するものである。<引用終了>
この件については、区の乖離報告を無批判に信じた区会議員がいたようです。例えば、中妻じょうた区議は以下のようなブログを書いています。今回明らかになった板橋区の主張に対してどう考えておられるのか、ぜひ明らかにして欲しいものですね。



ちなみに、DNA解析については、当初から検査されたホタルの素性について疑問の声が上がっていました。2015年1月26日には元館長の代理人(弁護士)から以下のように指摘されていました。長年、ホタル生態環境館でホタルの実物を見てきた筈の区会議員が、容易く板橋区の主張を鵜呑みにしてしまうのは残念でなりません。

板橋区ホタル生態環境館あれこれ: ホタル生態環境館の累代飼育を否定する板橋区の報告書への反論文書
http://tale-of-genji-and-heike.blogspot.jp/2015/01/blog-post_28.html
イ DNA解析による報告について 
ホタルのDNA分析に基づく報告については慎重な判断が必要である。 そもそも、DNA解析によって阿部氏のホタル飼育の実態を否定しようとする動きそのものにきわめて陰湿な悪意を感じざるを得ない。 
第2に、今回の解析がどこのホタルによって検査された結果であるのかは分からないということを指摘しておく。
通常、こういう検査であれば、第3者立会いの元、DNA解析に出さなければならないが、ホタル生息調査と同様、密室で決められた可能性が高く、今回のDNA調査に用いられたホタルが以前からホタル生態環境館に生息していたものであるかどうかというそもそもの前提条件が不確かである。ホタル生態環境館のホタルであるということを全く特定出来ないというやり方そのものが解析方法以前の問題である。
したがって、基本的に本件報告によってホタル飼育の実態を否定することは到底受け入れることができない。
以上

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