2017年1月2日月曜日

原研によるナノ銀放射線低減実験報告書の問題点(4)~測定器の記載無し

これまで原研から出たナノ銀による放射線低減実験の報告書については以下の記事で批判してきました。
今回は、原研の報告書には、実験に用いられた放射線計測器の型番など、その測定器が何なのかを示す情報が一切記載されていない点を取り上げます。

阿部宣男博士が松崎いたる区議を名誉棄損で訴えた裁判の準備書面には以下のように記されています。
(3) 測定器等の明記がないこと
また、原研の測定の問題点としては、使用された機器の型番が記載されておらず、測定項目や測定精度について明確な仕様が分からない点を挙げることができる。
測定機器を明確に書かないのは実験レポートとしての信憑性に疑念を抱かせるものである。
さらに測定時の写真が載っていないのも、どのような状態で測定したかがわからず、これまた信頼性を削いでいる。
実験レポートとしては驚くべき事ですが、放射線測定を行った測定器がどのような仕様のものか原研の報告書には書かれていないのです。測定器を特定できる情報を書くのは実験レポートの基本だと思っており、この基本ができてない報告書が専門家によって書かれたものとは信じられません。

測定器が特定できないため、その機器が出力するデータ項目やその精度が把握できません。また、例えば、原研の報告書には、放射線のカウント値の他にBq/kg(重量あたりのベクレル数)が載っているのですが、この値がどのように計算されたかが分かりません。おそらく測定器がカウント値から自動換算しているのだと思いますが、元データとなる「重量」を人間が入力したのか、あるいは、測定器が自動計量したのか不明ですし、重量値としてどのような値を与えたのかも分かりません。そのため、原研報告書にあるBq/kg値をそのまま使った分析には注意が必要です。


測定器を特定できる情報が書かれていない点は、ニセ科学批判の観点からも厳しく批判されるべきものだと思いますが、不思議なことに、この点を批判するニセ科学批判者を見たことがありません。原研という権威筋が書いた報告書であれば、内容がどうあれ、無批判に受け入れるのがニセ科学批判の姿勢なのでしょうか?

以上

6 件のコメント:

  1. 河内のおっちゃん2017年1月27日 22:03

    ナノ銀が放射能を消滅させた場合、短時間のうちに多量の熱と放射線が発生していることになりますが、そうすると人は危険で近寄ることができません。またホタルにも悪影響が及ぶ可能性も高いはずなのですが、これについてどう説明するのでしょうか。

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    1. 今のところ、放射性物質が何らかの作用で非放射性物質に変換されたのではないか・・という仮説が有力だと思いますが、まだ機序は不明です。現在は、まず実験を繰り返して、もっと正確に現象を捉える努力をしている段階だと思います。

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    2. ちなみに、放射性セシウムが通常よりも早く壊変したと仮定して、測定できるほどの過剰熱が発生するか否か試算した結果を以下に書きました。結論を言うと、ナノ銀実験の試料の規模では、熱発生があったとしても、たいへん小さく、現状の室内環境では測定できるレベルに達しないと思われます。

      素人が知りたい常温核融合: ナノ銀による放射線低減実験で過剰熱は測定できるか?
      http://amateur-lenr.blogspot.jp/2016/07/blog-post_19.html

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  2. 河内のおっちゃん2017年1月27日 22:21

    ナノ銀が放射能に効果を発揮すると仮定した場合、ナノ銀を含む濾過材は放射化によって放射能を帯びた状態に変化するわけです。つまりナノ銀や濾過材は放射性廃棄物として厳重に処理しなければならいのです。
    ホタル館はこの問題をどうやって解決したのでしょうか。また家庭向けに配布や販売されている濾過材も放射性廃棄物と化すのですから全て適切な処理が必要なのですが、これは社会問題とならないのでしょうか。

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    1. 現状では、ナノ銀を混ぜた場合に放射線の強度が下がるという現象が観測されています。現時点で機序は不明であり、この現象の際に放射化を引き起こす中性子等が発生しているとは言えません。
      また、これまでに、非放射性物質にナノ銀を当てた時に放射線強度が増えたという現象は観測されていません。

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  3. 河内のおっちゃん2017年1月31日 20:13

    ですから、放射性物質が非放射性物質に変換されれば、その過程では多量の放射線が放出されるわけです。放射能とは放射性物質が非放射性物質へと近づく過程で放射線を繰り返し放出する現象です。放射線も熱も出さずに短時間で非放射性物質に変換するというのは物理学の否定と同じことではないでしょうか。

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