2014年12月13日土曜日

板橋区のホタル生息調査の方法は間違っていた

前回の記事のコメント欄に、11月27日の板橋区議会定例会にて公明党のしば佳代子区議が発言した内容が載りました。引用します(赤字は引用者による)。
環境課は、今年1月末に実態調査をした結果、23匹のホタルがいることを発表しました。その後、確認されたホタルがどんどん増えている事がわかりました。振り返って言える事は、詳細について述べませんが、この調査は失敗だったという事です。夏まで待ち、飛んでいるホタル数える方法が一番正確性があったと言えます。命が相手の調査ということを肝に銘じて慎重に行動をし、区民から誤解を受けない、区民が理解できるような行動をとっていただきたいことを要望し、以下の質問をいたします。
この発言でも、板橋区の行ったホタル生息調査について、「調査は失敗だった」という認識が示されています。調査の後に確認されたホタルの数が、調査による推定よりも遥かに多かったのですから、当たり前の評価だと思います。

この発言では、もう一つ重要な事が指摘されています。「夏まで待ち、飛んでいるホタル数える方法が一番正確性があったと言えます。命が相手の調査ということを肝に銘じて慎重に行動をし、・・・」という所です。聞いた話では、ホタル館では、夏が近づいてホタル幼虫が川底から上陸してくるタイミングで、闇夜の中でホタル幼虫の発する光を数える方法が用いられていたそうです。そのため、しば区議の挙げた方法が一番正確かどうかは意見の分かれる所ですが、それは些細な問題です。

この指摘の本質は、「命を持っているホタル幼虫を傷つけたり殺したりしなくてもホタルの数を勘定できる」という点にあります。飛んでいる成虫や上陸する幼虫を数えるだけなら、見ているだけで済むので、ホタル幼虫に危害を加える心配はありません。

ホタル幼虫にとって安全な方法が存在し、従来行われていたにも関わらず、板橋区の行ったホタル生息調査では、ホタル幼虫の住処であるせせらぎの川底を荒らし、ホタル幼虫を傷つけ、殺してしまうような方法がとられました。もとより、せせらぎやホタル幼虫は板橋区の貴重な資産です。敢えて資産を毀損するような乱暴な方法をとった板橋区の責任は非常に重いと考えます。このような失敗を繰り返さないために、この方法を決めたプロセスの問題点を洗い出して、区民に説明するとともに、再発防止策を講じるべきだと思います。


ホタル生息調査で、どのような方法がとられたのかを振り返ってみます。

調査が行われた冬の時期、ホタル幼虫は川底で生活しています。ホタル館のせせらぎの川底は、ホタル幼虫の生育に適するように作られていました。約40〜50センチのスポンジ状の層があって、そこにホタル幼虫やカワニナの稚貝が潜んでいたそうです。この層は、下から、顆粒状のバイオ用土、硅砂、サンゴ砂、那智石小玉、水草、流木片などを積み上げて造成されたものです。

川底に足を入れれば、そこに生息している幼虫や稚貝を踏み潰すだけでなく、踏んだ時に押し出される水によって、川の中へ幼虫を押し流してしまう危険があります。そのため、最初にせせらぎを作って以来、飼育スタッフは川底には一回も足を踏み入れたことがなかったそうです。せせらぎの川底はホタルの「聖域」だったと言えるでしょう。

ところが、ホタル生息調査では、せせらぎから25cm×25cmの大きさで27箇所の川底を剥ぎ取り、ビニール袋に入れ、その中を探すという方法が取られました。以下、生息調査の報告書から引用します。

1) 川底を剥ぎ取った27箇所(全体306箇所)


2) サンプルの採取方法


3) ビニール袋に入れられたサンプル


4) 中身の調査


5) 再放流


上記の報告の中には、「生体を傷つけないように最新の注意を払いながら」や「個体群への影響を最小限に留める事を最優先し」などの記載が見られますが、水の中でエラ呼吸で生きている幼虫を川の外にすくい出し、バット容器の中で仕分けをするのが幼虫に良い筈がありません。また、「再放流」と言っていますが、放流したらその中にいた幼虫は水に流されて死んでしまうでしょう。寒い冬の間、川底でじっとしているホタル幼虫にとって過酷な調査であったことは間違いないと思います。

さらに問題があります。調査の様子を監視していたボランティアが撮影したビデオ映像から切り取った以下の一連の写真をご覧ください。調査員がせせらぎの川底に足を踏み入れたまま、作業したり、移動したりしています。サンプル採取対象となった部分以外も、足で踏み荒らしているのです。





また、調査の際にせせらぎの水流を止めていなかった事も指摘されています。せせらぎの水流は毎秒30〜40センチの速さで流れているので、足を踏み入れた時に押し出されたホタル幼虫は流されて死んでしまったでしょう。

これは本当に「生息調査」だったのでしょうか? ホタル幼虫の傷つけ殺すために行われた作業のように思えてしまいます。最初の指摘の繰り返しになりますが、ホタル幼虫にとって安全な調査方法ははっきりと存在していました。夏近くまで待って、岸に上陸した幼虫や羽化した成虫を数えれば良かったのです。いったい何のために、このようなホタル幼虫の命を損なう方法をとったのでしょうか? 板橋区は原因を糾明すべきだと思います。

以上







0 件のコメント:

コメントを投稿