2016年1月11日月曜日

原研によるナノ銀放射線低減実験報告書の問題点

松崎いたる区議がブログの中で、原研(日本原子力研究開発機構)がナノ銀の放射線低減効果実験について書いたレポートを根拠の一つとして取り上げていたのに驚きました。このレポートの内容については、実験結果以前にたいへん疑問があり、信頼性に欠けるものだと考えているためです。



このレポート自体は、松崎いたる区議が名誉毀損で訴えられた裁判の証拠資料として松崎いたる区議側が提出し、以下のようにインターネット上で公開しています。




この乙第18号証に示されたナノ純銀による放射性物質低減に係る測定試験の報告書(全12ページ)について、記載内容の信頼性を疑わせる重大問題だと考える点を以下に述べます。特に9ページ以降に記された追加試験(5月23日と6月1日に実施)の記述が対象です。

まず、11ページには追加試験について以下のように記載されています(乙第18号証から引用)。
○追加試験の経緯
4月16日依頼者(ホタル館)、大学面談 (JAEA同席)時に、依頼者側より次の申し出があった。前回試験に使用した6試料は均一な土壌であるとして、除染資材施用前のバックグランド測定は実施していなかった。しかし、少なからずとも差があると考えられるため、「d.未処理の汚染土壌」を2つに分け、一方に新たに除染資材を施用して測定することにより試料の不均一性を検討するためのデータを取得する。 
○測定試料
前回試験では、ナノ銀による効果を低下させる恐れのあるゼオライトが混入していた汚染土壌を使用していた。そのため、今回はゼオライト混入のない汚染土壌を使用することとした。
以下に問題を列挙します。 この追加試験で使われた試料はどこから来たのか、問題としていたゼオライト混入はあったのか無かったのか、試料の不均一性はどのように検討されたのか、短い記述の中に大きな矛盾があります。


問題1: 既にホタル館に回収された筈の「d.未処理の汚染土壌」の使用

追加試験に使用したと主張される「d.未処理の汚染土壌」は、前回試験で作成された試料の一つを指している。しかし、前回試験の報告(8ページ)には以下のように記載されており、試料はホタル館に回収された筈である
(2)測定試料の回収・移送(場所:東京都市大学(川崎市or世田谷) ⇒ ホタル館)
タクシー(JAEA and/or ホタル館長阿部氏)
この記載に従えば、追加試験を実施した時に、試験を行った東京都市大学に「d.未処理の汚染土壌」は存在していない。前回試験の報告と矛盾しており、追加試験に用いられた試料をどこから持ってきたものなのか理解できない


問題2: 「ゼオライト混入」についての矛盾

11ページに追加試験の試料について以下のように記載されている(再掲:赤字は引用者による)。
前回試験では、ナノ銀による効果を低下させる恐れのあるゼオライトが混入していた汚染土壌を使用していた。そのため、今回はゼオライト混入のない汚染土壌を使用することとした。
追加試験に用いられたとされる「d.未処理の汚染土壌」は前回試験に用いられたものである筈。つまり、「ゼオライトが混入していた」ものである。ところが、「今回はゼオライト混入のない汚染土壌を使用することとした」と述べており、「d.未処理の汚染土壌」は「ゼオライト混入のない」ものとされている。明らかに矛盾した記述であり、この文章の内容を全く理解できない


問題3: 前回試験の置いた前提の否定と不均一性

11ページの文章を再度以下に引用する(赤字は引用者による)。
前回試験に使用した6試料は均一な土壌であるとして、除染資材施用前のバックグランド測定は実施していなかった。しかし、少なからずとも差があると考えられるため、「d.未処理の汚染土壌」を2つに分け、一方に新たに除染資材を施用して測定することにより試料の不均一性を検討するためのデータを取得する
この文章からすると、前回試験は6試料が均一な土壌であるとの前提に基づいて行われたものであると理解できる。ところが、「少なからずとも差があると考えられる」のであれば、その前提が間違っていたことになる。

更に、追加試験では、元々1つの試料だったものを2つに分け、片方にナノ銀を施して測定することにより「不均一性を検討する」としている。しかし、報告書の中に「不均一性」を検討した結果は述べられていない。前回試験の前提の妥当性を検証するためにも重要な検討だった筈だが、いったいどうなったのだろうか?

以上



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