2015年6月13日土曜日

むし企画代表が板橋区を訴えた裁判で板橋区が「ホタルが飼育されていたという事実は争わない」と回答

2014年1月27日に板橋区によるホタル生息数調査が実施された直後、飼育業務を委託されていた「むし企画」が板橋区から突然契約を解除されました。時系列で見ると以下のようになっています。

2014-01-27
  • 板橋区による抜き打ちのホタル生息数調査。元館長への事前連絡一切なし。
  • 作業委託先は(株)自然教育研究センター。資源環境部長と環境課長が立会い。
  • 調査の結果、見つかったのはゲンジボタル2匹、ヘイケボタル0匹。全体として23匹と推定。
2014-01-30
  • 同日夕方、元館長に対し課内異動が発令され、館長職を解かれる。
  • 更に、元館長に対し「三日以内に立ち退くように」と業務命令が出される。
  • 業務委託されていた『むし企画』に対し、板橋区から電話にて2月1日にて契約解除すると通告。内容証明付き郵便にて契約解除通知が発送される。(元の契約期間は2014年3月31日までであった)
2014-02-01
  • 「むし企画」との契約が解除され、新たに「(株)自然教育研究センター」の契約がスタート。

解除の前々日に解除通知を電話で行うのは相当の異常事態だと思います。この解除理由については、総務部長が以下のように議会で説明していました(赤字は引用者による)。(2014年2月には環境課長が訂正答弁を行っていますが、総務部長答弁の方が新しいのでこちらを採用しました
2014.10.28 : 平成26年 決算調査特別委員会 本文
◯総務部長
契約行為として問題があるんではないかというご質問でございますけれども、ホタル生態環境館に係る本業務委託契約につきましては、これまでむし企画が蛍の飼育に係る業務について、蛍に係る飼育技術や飼育実積から契約の相手方として最適であると判断し、随意契約を行ってきたものでございます。
このたび、本契約の履行状況やむし企画の実態に関するむし企画の代表者の話等から、今後、契約履行は不可能と判断し、契約の解除を行ったものでございます。
むし企画は契約を解除されたので、この契約に関わる契約金を得ておらず、この処分を不当として板橋区を被告とする裁判を起こしました。

この裁判で板橋区から驚くべき見解が示された事が、阿部宣男博士のブログに掲載された裁判資料にて判明しました。ここでは2点を取り上げます。一つは、板橋区が「ホタル施設内で、ホタルが飼育されていたという事実は争わない」と表明したこと、もう一つは、阿部宣男博士が「仕様書記載の業務内容について履行を確認してした」と認めたことです。

原文を引用します(赤字は引用者による)。

原告(むし企画代表)から出された求釈明申立書は以下です。
求釈明申立書 
平成27年4月28日 
被告資源環境部環境課が平成27年1月に作成した「板橋区ホタル生態環境館のホタル等生育調査結果と元飼育担当職員の報告数との乖離について(報告)」(以下、「乖離報告書」という。)は、「Ⅸ 総括」において、「塩基配列解析(DNA)調査報告によると、ホタル生態環境館において平成26年に羽化または発見されたゲンジホタルのDNA調査では、福島県大熊町のホタルではなく、西日本地方のDNAを持ったゲンジボタルであることが明らかになった。これは、西日本地方のDNAを持ったホタルが人為的に移動されていた可能性が高いということを示しており、元飼育担当職員が述べていた累代飼育がなされていたなら、西日本地方のホタルが存在するというのは不自然である。」、「ホタル生態環境館のホタルは、外部から人為的移動により持ち込まれ、累代飼育も行なわれていなかったものと考えられる。」としている。 
他方で、被告指定代理人篠岡氏は、平成27年4月10日の口頭弁論期日において、本件訴訟では、「乖離報告書の記載内容に基づく主張をする予定は無い」、「乖離報告書はホタル館のホタルのDNAに関するものであり、ホタルの飼育実態についてのものではない」、「ホタル館におけるホタル飼育の実態を争う予定は無い」と述べた。 
以上を前提として、被告に対し以下の点について釈明を求める。 
なお、実際には、ホタル持込みの事実はなくホタル館では累代飼育が行なわれていたのであり、以下の釈明によって、原告として、乖離報告書の記載内容が事実であると認めるものではないことを、念のため付言する。 
1 被告指定代理人のいう「ホタル飼育の実態」について
被告指定代理人の「ホタル飼育の実態を争う予定は無い」との発言の趣旨を明確にされたい。
具体的には、①ホタル館においてホタルの持込みは無く、ホタルの累代飼育が行なわれていた実態を争わないという趣旨であるのか、それとも、②ホタル館においては累代飼育は行なわれておらず、持込みホタル飼育の実態しかなかったが 、それでも、原告の委託業務自体の履行としては問題としないという趣旨であるのかを明確にされたい。
また、②である場合、ホタル館における「持込みホタル飼育の実態」は、平成25年度のみであるのか、それ以前からであるのか、後者である場合いつからであるのかも含めて、被告の認識を明確にされたい
。 
2 原告の委託業務の履行について 
(1)  被告において、以下の事実を認めるか否か明確にされたい。
仮に問題があることを指摘する場合には,そのことがどのように本件業務委託契約の解除に結び付く事実となるのかについても明らかにされたい。 
① 阿部氏を含む被告職員以外の者(補助者・ボランティアスタッフ等)が、本件委託業務(ホタル生態環境館・ビオトープ(実験水路)管理及びホタル飼育・水質管理調査)業務に従事していたこと 
② 原告が、ホタル館に、上記委託業務に必要な資材(器具や生物*別紙1記載のもの等)を納品していたこと(但し,すべて正確に別紙1記載のものが納品されていたかを問うものではなく,基本的に原告が納品していたことのあるものを掲示しており,必ずしもこれに限定する趣旨ではない) 
③ ①②も含めて別紙の原被告間の仕様書にかかる業務内容(別紙2参照)の履行はなされていたこと 
(2) 被告は、原告が直接に補助者らを指揮監督していなかった点のみを契約違反の理由と主張するのか否か明確にされたい。併せて、その余の契約違反の理由を主張する予定がある場合には、その理由を明示されたい。 
以上
これに対して、被告である板橋区は以下のように回答しました。

1 求釈明事項1について 
ホタル施設内で、ホタルが飼育されていたという事実は争わないとの趣旨である。 
2 求釈明事項2について 
(1) 同①について
被告職員以外の者が、本件委託業務に従事したことのあることは認める。 
(2) 同②について
本件契約は、消耗品の納品自体を目的とするものではなく、乙第1号証添付の各仕様書「5.業務内容」欄記載の役務の提供を目的とするものであることから、求釈明申立書別紙1記載の品及びそれに記載されていない品の納品状況は不明である。 
(3) 同③について
本件委託業務の遂行に原告が最適であると推奨した元被告職員阿部氏が、平成25年4月から平成26年1月までの間、乙第1号証の仕様書記載の業務内容について履行を確認していたことは認める。 
(4) 同(2)について
被告は、原告の主張、主張整理の結果、争点に対する裁判所の訴訟指揮など、訴訟の推移に応じて、適時適切な主張をする予定である。 
以上
原告の求釈明申立書にあるように、4月10日の口頭弁論で板橋区代理人から「ホタル館におけるホタル飼育の実態を争う予定は無い」という表明があった事を受けて、原告はより詳細にその意味を確認したいと要求しています。
これに対して、板橋区は「ホタル施設内で、ホタルが飼育されていたという事実は争わない」と回答したのです。さらに、阿部宣男博士が「仕様書記載の業務内容について履行を確認していた」ことも認めています。

この「事実を争わない」というのは、民事訴訟法159条1項によって自白があったとみなされるそうです(擬制自白)。素人理解では、板橋区はホタル館におけるホタル飼育の実態があったと認めたという事でしょう。
(自白の擬制)
第百五十九条  当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2  相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3  第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。
さらに「仕様書記載の業務内容について履行を確認していた」とも認めているので、板橋区の総務部長が述べた「本契約の履行状況やむし企画の実態に関するむし企画の代表者の話等から、今後、契約履行は不可能と判断」という理由が具体的にどのような事実に支えられているのか分からなくなりました。

板橋区は議会での答弁と矛盾したことを裁判で出してきたとの理解です。
過去の答弁の修正も含めて、板橋区は整合性のある説明をする責任があると思います。

以上

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