このガラスハウスの中に、ホタルの棲むせせらぎが流れています。人工的に作られたものですが、できるだけ自然の状態に近づけるように工夫されています。板橋区のホームページに載った「ホタル生態環境館のご案内」というページには以下のようなせせらぎの写真が載っています。植物が繁茂しているので夏の時期の写真でしょうか。
今はホタル生態環境館のホームページが廃止されてしまったようなのですが、昔のホームページには以下のような写真が載っていました。夜、ゲンジボタルが発光しながら飛んでいる様子を撮影したものでしょう。幻想的な光景です。
以下のような記事も載っていました。大事なことが書いてあります。
当施設ではホタルの数を無理矢理増やしているのではなく、あくまでも生態を重視し、ほぼ自然の状態にしている事で、ホタルの永年発生を得ております。これがホタル生態環境館の思想でした。
昆虫を含む小動物の「飼育」と言うと、プラケースのような飼育箱を用意して、毎日餌をやり、時々水を替えたり排泄物を掃除する…という行為を思い浮かべます。いわゆる「バット飼育」です。おそらく、ホタルを「飼育」している人や業者の多くも同じように考えているでしょう。
しかし、ホタル生態環境館で行われていたのは、こういう「飼育」とは全く異なる営みでした。そこでは、ひたすら、ホタルに適した自然環境を再現し、維持するために多くの努力が傾注されていました。
餌を与えたりしません。餌となるカワニナは一緒に棲んでいました。排泄物の掃除もしません。排泄物はせせらぎにいる微生物や小さな生き物が始末していました。いわゆる「飼育」は行われていませんでした。その代わりに、頻繁に水質を検査し、おかしな所があれば濾材を調整して清浄さを保ち、適切な温度・湿度を保つために通気口を開閉し、霧吹き散水するといった、生態環境を保つためのたいへんな努力が続けられていました。
ホタルは「飼育」されていたのではなく、そこに棲んでいたのです。「ホタル生態環境館」とは秀逸な命名です。ホタルを飼育していたのではなく、ホタルが棲むのに適した生態環境を整えていた施設だったからです。
できるだけ自然を模倣する。そして、ほんの少しだけホタルに有利なように手を加える。例えば、カメムシやヒルなどの天敵の駆除や、水温のコントロールを行う。これによって、ホタルの生育率は自然界より少し高くなっていたでしょう。この成果が毎夏の約2万匹のホタルの羽化だったのです。
飼育ではなく、生態環境の構築と維持。私はこれこそがホタル生態環境館の本質だったと思います。
以上
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