2015年6月19日金曜日

データ分析: 自然教育研究センターのガス使用量の謎

【訂正予告2015-6-19】
松崎いたる区議から以下のような指摘を受けました。この指摘のうち、ガスファンヒーターを冬場に動かしていた件についてはその通りだと思います。記事を書いた時点でガスファンヒーターを使っているとは思っていませんでした。したがって、冬場のガス使用量には、ガスファンヒーターによる暖房分が含まれます。事実誤認があった点をお詫びします。
ただ、「日常的に煮沸消毒をしていた形跡はみとめられません」という指摘には同意できません。
改めて、論点を整理した上で週末にでも本文を訂正したいと思います。ちなみに、この件に関して、不思議だった事が一つ分かりました。また機会があれば書きたいと思います。


【訂正予告終了】

資料: 2012年4月~2015年3月のホタル生態環境館の電力使用量など」には、もう一つ興味深いデータがあります。ホタル生態環境館での都市ガスの使用量です。

以下の図が2012年4月から3年間のガス使用量(m3)をグラフにしたものです。大きな図は ここ にあります。
このグラフから以下が見て取れます。
  • 阿部宣男博士による飼育期間(2012年4月~2014年1月)は、2012年度も2013年度も良く似たガス使用量になっている。特に、11月~4月の冬から春にかけてのガス使用量が多い。
  • これに対して、自然教育研究センターによる飼育期間のうち、2014年3月以降は、ガス使用量が激減している。
  • 年間合計で比較すると、ガス使用量は以下のように約10分の1になっています。
    2012年度(阿部宣男博士が全期間管理): 3,560m3
    2014年度(自然教育研究センター全期間管理): 379m3

    なお、自然教育研究センターが飼育業務を開始した2014年度の2月のガス使用量が多い理由は不明です。単に計上が1月ずれているだけなのか、自然教育研究センターも2月だけはガスを使っていたのか、幾つか可能性があります。
この差は何から生まれたのでしょうか? 阿部宣男博士に聞いたところ、ガス使用には大きく3つの要因がある事が分かりました。以下、使用量の妥当性を見てみます。
  1. 煮沸消毒: 阿部宣男博士は、「閉鎖空間での飼育の基本はなるべく菌類等を入れない、入れさせない」という考え方に従って、生態水槽等の濾材や石、濾過槽本体、飼育道具の煮沸消毒を日常的に行っていたそうです。
    後述する暖房や水温調節を使っていなかったであろう6月~10月の月平均ガス使用量は102m3/月(2013年度)になります。都市ガス13Aの発熱量を11,000kcal/m3とすると、15℃の水1リットルを効率50%で沸騰させるのに必要なガス量は、
    (100℃-15℃)×1000 ml÷11,000 kcal÷50%=0.0155 m3/l
    日平均ガス使用量は、1月を30日として、3.4m3/日ですから、日平均で沸騰させた水の量は、
    3.4 m3/day ÷ 0.0155 m3/l = 219 l/day
    となります。沸騰させたままの状態でのガス量を含んでいませんので、実際にはこれより少ない量の水を沸騰させていたと思われます。妥当な範囲だと判断しました。
  2. ガスファンヒーターによる暖房: 阿部宣男博士によると、事務室のガスファンヒーターを12月~3月に使用していたそうです。
    都市ガス13Aの発熱量を11,000kcal/m3として、大型のガスファンヒーターでのガス消費量5,500kcal/hと仮定すると、「1時間あたり0.5m3」の消費量になります。1日に12時間、フル稼働したとして、30日間のガス量は、
    0.5 m3 × 12 時間 × 30日間 = 180 m3
    となります。2013年12月~2014年2月のガス使用量は、それぞれ、301m3, 520m3, 438m3なので、上記の煮沸消毒分を差し引いても、この暖房以上のガスを使っていた事になります。
  3. 生態水槽の入れ替え用の水の温め: 180センチ(648ℓ)水槽が10本、大中小の水槽が多数あり、この水の入れ替えを行う際に、冬場は水温を環境に合わせて温める作業をしていたとのこと。水量が大きいので、温める温度差は小さくても、それなりのガス量を食っていたと思われます。(正確な値は計算できませんが)
上記のガス使用量の分析から、暖房や水の温めが不要だった夏場でも平均して102m3/月のガスを消費していること、および、冬場は暖房を勘案しても煮沸消毒を行うのに十分な量のガスを消費していることが分かりました。阿部宣男博士の時代には、煮沸消毒が行われてきたのだと考えます。

ガス消費量の差から、自然教育研究センターはそれまで日常的に行われてきた煮沸消毒を止めてしまった疑いがあります。なぜ、そのような判断をしたのかが不思議です。自然教育研究センターは、菌を入れる事に無頓着だったのでしょうか? それとも、板橋区が随意契約しただけあって、煮沸消毒しなくても菌を殺せる超能力でも持っていたのでしょうか?

2013年以前の実績ある飼育方法(煮沸消毒で菌を入れない、等)を自然教育研究センターが踏襲しなかったのはホタル飼育の観点から見ると、全く不適当だと思います。また、管理担当課は、電力やガスの使用量を予実管理の面から必ずチェックしている筈です(チェックしていなければ怠慢でしょう)。したがって、この急激な使用量変化に気づいた筈ですが、それを板橋区や区議会が看過しているのが不思議でなりません。費用の無駄使いもいけない事ですが、必要な作業に費用を使わないのも問題だと思います。

以上

1 件のコメント:

  1. 昨年1月のホタル生態環境館の生息調査から、裁判で争われはじめたとは言え、これだ多く疑問や疑念がある板橋区役所資源環境部の酷さと板橋区議会の無能さを見続けています。
    昨年5月頃のこと、体験した事を書かせてもらいます。

    生態環境館を見学した時の事です。先に別室でスタッフから、ホタル飼育についてまた部屋に置いてある水槽の説明も受けました。その水槽にいるのがカメムシとのこと。そうしたら見学者のひとりから、「カメムシは『ホタルの天敵』なのに、なぜ飼っているのだ」と追求されて、説明員は何も答えられなくオロオロしていました。後にインターネットで調べたら、やっぱり「カメムシはホタルの天敵」でした。

    この説明員は、自然環境研究センターのスタッフとのこと。既に区役所は施設の閉館を規定の路線通り決めていて、ホタルを飼育するどころか羽化して欲しくなかったのではないかと思います。このカメムシをせせらぎに放していたら・・・、なんて事も考えてしまいます。
    そうじゃなくても、ホタルの施設に「ホタルの天敵」を持ち込みなんて、「意図」か「素人」のどちらかしかないです。

    その後、カメムシの水槽はなくなったと聞きました。

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